刺身を食べた後の腹部の激痛はアニサキス食中毒の可能性

アニサキスによる食中毒が激増

 

芸能界にも罹患者が多数

アニサキスによる胃の痛みお笑いコンビ「品川庄司」の庄司智春さんが10日、フジテレビの「ノンストップ!」に出演し、魚介類から感染する寄生虫「アニサキス」よる食中毒の体験を明かしました。庄司智春さんによれば、昨年の夏の地方ロケで鮭イクラ丼を食べた日の深夜3時ごろに胃に激痛が走ったそうです。激痛と小康状態を繰り返し一睡もしないまま、翌日の仕事を終えて夜中に救急病院に駆け込んだようです。

最初の診断では胃痙攣と診断されたものの胃の痛みは治まらず、二日目の朝に別な病院に行ったところ、医師がアニサキスを疑い内視鏡で検査したところ。何と8匹のアニサキスが見つかったそうです。8匹のアニサキスを取り除くのに10時間掛かったということですから、大手術に匹敵する手術時間の長さです。

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アニサキスは、一匹でも激痛で失神することがあると言われていますので、三大激痛に匹敵するか、三大激痛の次に位置する痛みかもしれません。なお、同局の谷岡慎一アナウンサーも罹ったことがあるということですので急増しているのは間違いなさそうです。

また、同じく10日放送のテレビ朝日系「羽鳥慎一モーニングショー」でも特集としてアニサキス食中毒が急増していると報じました。番組では、渡辺直美さんが先月30日、アニサキス食中毒を起こしたことを報じました。

アニサキス症とは

アニサキス症の原因は寄生虫

ところで、このアニサキスによる食中毒というのは、どの様な病気なのでしょうか?アニサキスは最近急増している寄生虫で長さは2~3cmでサバ、イワシ、鮭、イカなどの魚介類を食べると胃の中でアニサキス症を発症させる厄介な寄生虫です。

アニサキスは回虫目アニサキス科アニサキス属に属する線虫で見た目は回虫にそっくりですが、回虫ほど大きくは有りません。アニサキスは、クジラ、イルカなどの海洋哺乳類が最終宿主で、これらの動物の腸管に寄生することによってのみ成虫となり、人体内で成虫したり産卵したりすることはありません。

海洋哺乳類の腸管で産卵された卵は糞便として放出され、オキアミなどの甲殻類に捕食され発育、そしても甲殻類が魚介類に捕食され、さらに成長するという食物連鎖の中で循環します。

アニサキス症の症状

アニサキスによる食中毒であるアニサキス症は、このアニサキスの第3期幼虫の経口摂取が原因です。アニサキスは、魚介類の内蔵に寄生し鮮度が落ちると身の方に移動するので、鮮度の良い刺身はアニサキスに感染する心配は無い、という説も有りますが俗説で身の中にも存在することが確認されています。

人体の寄生する場所により、胃アニサキス症、腸アニサキス症、腸管外アニサキス症に分類される幼虫移行症です。ほとんどは胃壁等の消化管壁は貫通しませんが、貫通した場合は穿孔性腹膜炎や寄生虫性肉芽腫を発症することがあります。

  • 胃アニサキス症の症状は、食事をした数時間後(3~6時間)に、場合によっては失神を起こすほどの腹部の激痛と嘔吐が起きます。嘔吐による吐瀉物は胃液のみで、下痢が伴わないことから普通の食中毒と区別することができます。
  • 腸アニサキス症としては腸重積症があります。
  • 腸管外アニサキス症では、膵アニサキス症及び寄生虫性肉芽腫が挙げられます。
  • アレルギーを発症することがありますが、初回感染時は症状は出ず再感染により発症します。
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治療方法

駆虫薬としてメゾンダゾールがありアニサキスが腸管から外に出て症状を起こしている場合に投与されますが、特効薬は存在しません。ステロイド系抗炎症薬を投与することで症状が改善されるとの報告がありますが、一般的には上部消化管内視鏡、所謂胃カメラにより個体を一匹づつ除去する方法であり、場合によっては開腹手術を行う場合があります。

なるべく早く治療を受けることで、アニサキスが腸管に移動する前に取り除くことができます。また、すぐに除去すれば痛みは直ちに無くなりますが、時間が経つほど胃壁の傷は大きくなりますので、痛みやが取れるまでに4日ほど掛かる場合もあります。

病院に行った際にも、鮮魚類を生食した場合はまずこのことを伝えることで胃炎や胃痙攣などとの誤診を防ぐことが出来ます。医者は、まず熱と咳が出たら風邪、胃が痛かったら胃炎としか診断してくれませんので、詳しい状況を説明するのは大事です。

予防

最大の予防法は生食しないことですが、日本人で魚介類の刺身等を生食しないというのは略有り得ませんので、次の点に注意することで防止または発生を低減できます。

発生を防止できる方法

  • 60℃の温度で1分以上加熱する。
  • -20℃以下で24時間以上冷凍する。

発生を低減できる方法

  • 良く噛んで食べる。
    一説には全く効果が無いというものも有りますが、時間をかけて咀嚼し、飲み込まないようにすれば効果は期待できそうです。
  • 良く見て食べる。
    身の部分にアニサキスの幼虫がとぐろを巻いている状態の斑点や線上の白いものが目視されたら生で食べないことです。目視で取り除いても中に隠れている場合が有ります。また、醤油に刺身をつけるとぞろぞろ出てくるという経験者の話もあります。
  • 小さく刻む。
    小さく刻むことでアニサキスを切断することが出来るように思われますが、完全に死滅させることは出来ません。

全く効果が無い方法

  • 酢につける。〆サバでも感染した例がある他、胃酸の中でも2~4日間ほど死滅しないと言われており、食酢程度では死滅しません。

一度感染すると、二度と刺身は食べたくない、ということも起きるそうですし、とにかく激痛を伴うため安全な食べ方を心掛けましょう。