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アルツハイマー型認知症の急激な増加と予防の重要性

野菜の画像アルツハイマー型認知症は家族にも負担を強いる病気

アルツハイマー病は、認知症のなかでもっとも多く不可逆的に進行する脳疾患の病気であり、また、看病や看護で家族にもっとも負担を強いる病気でもあります。休む間の無い介護の連続、体力を要する介護とストレスで介護者がノイローゼやうつを発症することも多く有ります。

増加するアルツハイマー型認知症

アルツハイマー病を含む認知症は有症率10%と推定され、日本では現在200万人が発症していると言われていますが、アルツハイマー型認知症がもっとも多く60%を占めています。認知症の有症者は、世界では2,400万人と言われており、日本は人口比で見ますと極めて高い有症率であり、今後高齢化社会が進むにつれて急増するものと思われます。

アルツハイマー型認知症は予防が重要

アルツハイマー病には特効薬が無いために対処療法は難しく、一旦発症すると終わりの見えない介護が始まりますので、いかに発症させないか、そして悪化させないかの原因療法が重要になってきます。近年、予防及び症状悪化を防ぐ方法として、音楽療法や笑い、運動療法さらに運動療法を発展させた運動と計算やしりとり等を同時に行うコグニサイズによって進行を遅らせる方法も模索されています。

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マインド食はアルツハイマー型認知症に対する食事による原因療法

アルツハイマー型認知症に対する驚異的な予防効果のマインド食

そんな中、米ラッシュ大学医療センターが学術誌「Alzheimer’s & Dementia(アルツハイマーズ・アンド・ディメンシア)」で紹介した食事療法に注目が集まっています。同大学のマーサ・クレア・モリス博士らの研究チームは、研究チームが開発した野菜中心の食事療法を実践することで、アルツハイマー型認知症の発症リスクを53%も減らすことに成功したそうです。

マインド食による研究の結果

研究チームは、マインド食(MIND食)と呼ばれる食事療法を2年かけて開発し、これを研究開始当時に認知症を患っていなかった923人を対象にマインド食(MIND食)を摂取する食事療法のグループと摂取しない他の2つの食事療法のグループに分け、平均して4年半に渡って追跡調査を行っています。治験者の年齢は58歳から98歳までで、中央値は81歳。144種類の食品の中から何をどの程度の頻度で摂取したかを年に1回、回答してもらう。その結果、マインド食(MIND食)を厳格に実践した参加者のアルツハイマー病発症リスクは53%低下したというものです。地中海式食事療法の実践者のリスク低減率は54%、DASH食は39%でした。

マインド食(MIND食)による効果の特徴

注目すべきなのは、マインド食(MIND食)は厳格に実践しなくて部分的に実践した場合でも、アルツハイマー病の発症リスクが35%下がったということです。そのため、厳格に実践した人と部分的に実践した人の合計の発症リスクが50%減少した結果になっています。地中海式食事療法とDASH食は部分的に実践しても、発症リスクに影響はなく。厳格に実践する必要が有ります。

生活の中で実践するためには、部分的に取り入れるほうが楽であることから、マインド食(MIND食)の優位性が認められる結果となっています。

マインド食(MIND食)の研究・調査内容

マインド食(MIND食)の摂取の方法は、10種類の食品については毎日取り入れ、5種類の食品については必ず避けるというものです。

研究は観察に基づいたもので、評価のバイアス(偏り)を避け、客観的に治療効果を評価することを目的とするランダム化比較試験は行われていませんので、研究結果はマインド食(MIND食)がアルツハイマー病の発症リスクを抑えた証拠にはならないが、アルツハイマー型認知症の発症リスク低下とマインド食(MIND食)に相関性があることを示しています。

マインド食(MIND食)で毎日摂取する食物

  • 全粒の穀物3回 
  • サラダ1回、その他1種類の以上の野菜
  • ワインはグラス1杯
  • ナッツ、

マインド食(MIND食)で定期的に摂取する食物

  • 豆類は1日おき
  •  鶏肉とペリー類は、1週間に2回以上
    魚は、1週間に1回
  •  オリーブオイル

マインド食(MIND食)で摂取を制限する食物

  • バターは、1日におおさじ1杯未満
  •  チーズ、揚げ物、ファストフードは、3つのいずれかを週に1回未満

マインド食(MIND食)による効果の根拠

全粒の穀物

 精製されていない穀物の事で玄米、発芽玄米、ふすまを取っていない麦、挽きぐるみの蕎麦等が有ります。ホールグレインとも呼ばれています。精製されたものと比べて、ビタミンB群、鉄などのミネラル、食物繊維などを多く含みます。

葉物野菜

研究によると、緑の葉物野菜を1日に1回から2回摂取したグループは摂取量が少なかったグループと比べて、認知低下の速度が劇的に低下し、年齢で言えば約11歳若かった、ということです。これは、MIND食(マインド食)を摂取することでアルツハイマー病の発症要因の一つである生活習慣因子が改善され、高血圧、高コレステロール、循環器病、糖尿病が予防できたものだと考えられています。

緑黄色野菜に豊富に含まれる、ベータカロチンやビタミンEやビタミンC等の抗酸化ビタミンは、認知症の予防に効果的だと言われています

ナッツ

ナッツ類は血圧を下げる効果が有る他、ポリフェノールを多く含んでいます。特にピーナッツの渋皮にはポリフェノールが多いことから渋皮ごと食べた方が良いと言われています。ナッツ類が固くて苦手な方は、ペースト状にしたり、またはココナッツオイル等で代用する方法も有ります。といいでしょう。

ベリー類

ベリー類には、ビタミンCやビタミンE群の1種の葉酸やポリフェノール、アントシアニン等の抗酸化物質が豊富に含まれている他、ペクチンという食物繊維を多く含む者が有ります。

豆類

 炭水化物、上質なたんぱく質、ビタミンB1、B2、B6及びビタミンEやカリウム、カルシウム、マグネシウム等のミネラルをバランスよく含ん でいる上、食物繊維やポリフェノール等も豊富です。

青魚といわれるサバ、イワシ及びサンマなどには、DHAやEPAが豊富に含まれており「血栓」の生成を防ぐ効果があるため心筋梗塞や脳梗塞を防ぎます。また、悪玉コレステロールの値を下げ、善玉コレステロールを増やす作用があります。また、EPAには、炎症抑制効果や精神を安定化させる効果も有ります。

また、赤身の魚に多く含まれているビタミンB群も認知症予防に効果が有ると言われています。

鶏肉

 赤身の魚と同じく鶏肉に含まれるビタミンB群が認知症予防に効果があると言われています。

オリーブオイル

 オリーブオイルに豊富に含まれるオレイン酸は、血液をサラサラにしてくれる働きがあります。エクストラバージンオイルには、特に、オレイン酸が豊富だと言われています。また、エクストラバージンオイルに含まれるオレオカンタールは、アルツハイマー病の原因物質と考えられているアミロイドβを減らす効果があるという研究報告があります。
また、オリーブオイルは毎日大さじ2杯程度をサラダと一緒に摂取することで便秘の改善・解消に効果があると言われています。

赤ワイン

 赤ワインにはポリフェノールが多く含まれています。ポリフェノールには抗酸化作用が有ります。

特記事項

マインド食(MIND食)の元となる地中海食とDASH食は、いずれもポリフェノールリッチな食べ物です。そのため、ポリフェノールの抗酸化作用により多くの生活習慣病に効果が有ると言われています。しかし最近の研究結果では抗酸化物質 が必ずしも生活習慣病予防効果をサポートしていない、とする有力な説も唱えられています。効果が有るのはポリフェノールなどの抗酸化物質では無くポリアミンであると考えられています。

但し、ポリフェノールリッチな食べ物は、ポリアミンリッチでもあるのでポリフェノールリッチな食べ物を食べれば効果があると勘違いしてしまう、ことの様です。にも拘らず、多くの製薬会社やサプリ業界はもちろんのこと、医者さえもポリフェノールの抗酸化作用ががん予防、糖尿病予防、認知症予防に効果があると謳って推奨しています

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アルツハイマー型認知症の原因

アルツハイマー型認知症の原因については、諸説あって断定的に原因が特定されているわけでは有りません。一般に言われているのは次の通りです。

アミロイドβの蓄積説

現在最も有力な説で、蛋白質の一種であるアミロイドβ(βアミロイドともいう)の排出が加齢ととも少なくなり、それに伴い脳の神経細胞が死滅して脳が委縮することで発病する、と言われています。アミロイドβの生成は、アルツハイマーを発症していてもしていなくても量は変わりませんが、発症している方は排出・分解力が低下して蓄積量が増えます。

なお、アルツハイマー型認知症の患者には、脳内のアミロイド斑と神経原線維変化の2つが特徴的に認められております。また、脳内の神経細胞ニューロンが機能しなくなりニューロン間の連結が消失しているのが確認されています。

遺伝説

遺伝子がアルツハイマー病に影響を及ぼしているとする考え方です。特に、若年性アルツハイマー病は「家族性アルツハイマー」とも呼ばれ、親から受け継がれた既知の3つの遺伝子のうちのいずれかの変化によって引き起こされることが確認されています。

環境因子・生活習慣因子説

最近の研究によって、生活習慣病の代表的な病気である高血圧及び糖尿病はアルツハイマーを引き起こすリスクが極めて高いことが分かってきました。また、食事習慣によって認知機能に差が出たり、運動やゲーム、読書をする人は、アルツハイマーを発症し難いそうです。睡眠不足や太陽に当たらない人も発症リスクが高くなる傾向にあります。環境因子・生活習慣因子が先述のアミロイドβの蓄積に関係している可能性も指摘されています。

アルミニウム説

比較的古い説です。飲料水にアルミニウムイオン濃度が高い地域にアルツハイマー病の発生率が高い傾向あったことから出た説です。産業界は、アルミニウムは99%が体内に吸収されず便とともに排出され、仮に吸収されても、ほとんどは尿と同時に排出されると主張しています。一方で、飲料用アルミ缶の内側には樹脂コーティングを行いイオン化して飲料に溶け込むのを防いでいます。アルミニウムの影響は無いと否定しつつも、業界団体等のホームページ上で敢えて説明を行っているのは、多少の懸念を感じているものと考えられます。

その他

その他にも様々な説が有りますが。アルツハイマー病の5%程度を占める若年性アルツハイマー病を除けば、ほとんどが60歳以降に発症しており加齢との相関は認められます。近い将来、原因が特定されるものと思われますが、予防については疫学的に有効な方法も見つかっており、実践することでアルツハイマー病の発症を遅らせたり、進行を止めたりすることが出来ます。

先述のアルツハイマー病の進行や発症に効果があるとされる音楽療法や笑い、運動療法さらに運動療法を発展させたコグニサイズと同様に、マインド食(MIND食)もその一つです。そしてマインド食(MIND食)の長所は、他の方法に比べて継続する上で負担が少なく長く実践できるということです。同じ食事療法でも、民間療法でがん治療を行う方法が極めて実践困難な方法であることに比べたら格段に容易です。