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「写仏」は禅にも通じる行の一種

仏画の画像

「写仏」は仏画を描き写すこと

「写仏」は、文字通り、仏師や仏画家よって描かれた仏さまのお姿を描き写す「行」の一種です。心を落ち着かせて集中して写仏することで、己の心の中にある慈悲の心、優しさや思いやりを感じて自分を見つめ直すことが出来ます。慌ただしい現代社会の中で、ひとときの安らぎの時間を持つことは重要なことです。
「写仏」は、文字が書けなくても仏教美術の一端に触れながら体験することが出来ます。

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「写仏」の歴史

9世紀初頭の 嵯峨天皇の時代の弘仁9年に疫病が大流行し多くの人が亡くなりました。これを憂いた嵯峨天皇は弘法大師空海の勧めを受け、「般若心経」を写経されました。その表紙に檀林皇后が「薬師三尊」のお姿を写仏されたのが写仏の始まりとされています。その写経された「般若心経」は、「勅封心経」として現在でも大覚寺心経殿に奉安されています。

また、難しい経典がわからない人々や文字が読み書き出来ない人々に、分かるように絵で描き表わしたものが仏画で、仏画を描き写すことを行とするのが「写仏」です。もともと、仏僧など仏門に関わる人しか描くことのできなかった仏画を、文字が読み書き出来ない人々にも仏画を描き写すことで写経と同じような修行を積むことができる、という説が有ります。

ただ、「写仏」という言葉を最初に使ったのは、画家でもあった東京八王子出身の難波淳郎氏が昭和54年の月刊「大法輪」で「写仏」の普及を提唱したのが始まりです。闘病生活の中で仏縁を得て不動明王を繰り返し透き写したものです。

「写仏」の対象となる仏様

写仏の対象は、如来、菩薩、明王、天部の他弘法大師等から選ばれます。「写仏」を行うお寺によって仏画が決められている場合がある他、自分の生まれ年による守り本尊を描く方法も有ります。

  • 如来(にょらい)
    釈迦が悟りを開いた後の姿が基本なので衣をまとっただけの質素な姿が一般的です。
    釈迦如来、阿閃如来、大日如来、阿弥陀如来、薬師如来、多宝如来、宝生如来
  • 菩薩(ぼさつ)
    釈迦が修行中だった頃の姿ですので、装飾品を身につけています。来世は如来になることになっている仏様です。
    地蔵菩薩、弥勒菩薩、文殊菩薩、観音菩薩、千手観音、勢至菩薩、普賢菩薩、日光菩薩、月光菩薩、虚空蔵菩薩
  • 明王(みょうおう)
    如来の変化身ともされる密教における尊格及び称号です。人々を救うために必死になっている姿が怖い形相になっています。
    不動明王、降三世明王、軍荼利明王、大威徳夜叉明王、金剛夜叉明王、愛染明王、烏瑟沙摩明王
  • 天部(てんぶ)
    天界に住む者の総称。古いインド神話の神々など、仏教以外の神が仏教に取り入れられて護法神となったものです。
    弁財天、大黒天 、沙門天、吉祥天、韋駄天、帝釈天、摩利支天、歓喜天、梵天
  • 弘法大師(こうぼうたいし)
    平安時代 初期の僧空海。お大師さまとして親しいまれている。 真言宗の開祖。
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「写仏」の方法

「写仏」に必要な道具

「写仏」は、仏画の下絵を透き写す方法と、紙に薄く下絵が描いてあるものをなぞる方法が有ります。お寺で「写仏」する場合は、道具が揃っていますので、それを使えば大丈夫です。自宅で「写仏」する場合は、筆ペン、色鉛筆、絵具もしくは墨汁(又は硯及び墨)と筆を使って行います。写仏する仏画によって使い分けいたします。

邪念を払い、心身を鎮めて落ち着いて一筆づつ写していきます。

写仏の場所

「写仏」は、お寺や写仏教室で行う場合と、自宅で行う場合が有ります。

自宅

自宅で「写仏」を行う場合は、書店で写仏用の仏画が描かれている書籍を購入する場合、お寺からインターネット等で仏画を取り寄せる場合及びインターネットの写仏用のPDFファイルをダウンロードして行う方法が有ります。ある程度、「写仏」の方法について説明があるものの我流になったり、線の強弱が不自然であったりします。

お寺・写仏教室

お寺や写仏教室で行う場合は、基本的に仏画の種類は限られてきます。自分の好みの仏画を持ち込むことは出来ません。一方で、基本的な指導が受けられますので整った仏画を描くことが出来ます。お寺や写仏教室での「写仏」は、毎日行っているところから、週1回もしくは月1回のところが有りますので、旅の思い出に「写仏」を体験したい場合は、予め体験出来る日にちを調べておいた方が無難です。
なお、菩提寺で「写仏」が出来る場合は、菩提寺で行った方が、完成した仏画を奉納したり、書き損じたものを炊き上げしてもらえるので便利です。

「写仏」の保管・処分

間違った場合の処分

写経と同じように間違った場合は、×印や斜線で消したり、ゴミ箱に捨てたりせずに、お寺のお焚き上げしてもらいます。時期によってお焚き上げをしていない場合は、年明けのお焚き上げの際に持っていきます。

写仏した後は

「写仏」したら、写仏したお寺や菩提寺に奉納するのが原則ですが、旅先で「写仏」したものは必ずしも菩提寺に奉納できるとは限りません。宗派によっては、断られる場合が有りますので、「写仏」したお寺で奉納する方が無難です。その他、巡礼先のお寺に奉納する方法も有ります。

持ち帰ったり、自宅で行った「写仏」は、プラスチックの箱に乾燥材を入れて保管いたします。不要になったら、間違った場合の処分方法と同様にお焚き上げをしてもらいます。なお、お寺によっては郵送で受け付けているところも有ります。