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新聞社が犯している新聞販売店への強要

新聞紙の画像新聞発行部数上乗せの実態

新聞社が系列の新聞販売店(以下「新聞舗」という)に販売部数を強制する「押し紙」というのが有ります。実際の新聞舗の販売部数に上乗せして新聞を送りつけ、上乗せした部数分の金額を新聞舗から回収するもので、業界用語では「残紙」及び「予備紙」とも呼ばれています。

上乗せの割合は一般に20~30%程度といわれていますが、毎日新聞では2005年当時某新聞舗に対して、なんと購買部数の106%で新聞舗の要請部数に対して68%もの押し紙を行ったとの新聞舗の証言が有ります。

30%という数字でさえ、大手全国紙の場合は100~200万部に匹敵する膨大な数字にになりますし、内訳で30%は上乗せ割合でいえば43%にもなります。「押し紙」問題については、現在毎日新聞が2件及び佐賀新聞が1件の新聞舗との訴訟を抱えていますし、毎日新聞は以前から新聞舗との間でトラブルが起きていました。

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業界内の不祥事を報道しない新聞社

しかし、新聞各社はこの「押し紙」問題に関しては全く報道していません。この件に限らず新聞社は身内の不祥事については以前から報道していません。2006年当時朝日新聞の秋山耿太郎社長(当時)の実息が大麻取締法で逮捕された際も、最初の逮捕についてはどの新聞社も報道していませんでしたが、2回目の逮捕の時に社会面の片隅に小さく記載されたほどでした。

また、押し紙問題は以前から度々問題になり各地で訴訟になったりしているものの新聞及び系列であるテレビでは報道されず、また、朝日新聞が公正取引委員会から注意を受けたことに関しても全く報道されていません。

ただ、朝日新聞に対する公正取引委員会の注意を引き出したのは、そもそも朝日新聞の記者が公正取引委員会の杉本和行委員長に対する、押し紙横行の実態に対する質問でしたから、内部告発に匹敵する勇気ある行動でした。

押し紙の問題点

新聞舗の経営を圧迫

ところで、この押し紙問題はどこに問題があるのでしょうか。まず、新聞社は新聞舗に部数を上乗せして届けていますから、上乗せ分を新聞舗が負担することになり、新聞舗の経営を圧迫します。新聞舗と新聞社の金銭の流れは新聞社によっても違いますし、新聞舗毎に違っているといわれています。内容も携帯電話の請求書以上に分かり辛いようで、明細の中身を理解している新聞舗の店主はいないのではないか、とさえ言われています。例えば、実数で3,000部、押し紙を含む販売部数4,200部の新聞舗は、収入は月間購読料4,000円として12,000,000円ですが、新聞社には、16,800,000円を支払うことになります。一旦、持ち出しが4,800,000円発生することになりますが、新聞社からの奨励金等の還付金が有りますので実際はマイナスになることは無いと思われます。但し、還付金の割合が低かったり、発行部数が低いと持ち出しで赤字になります。

新聞社の新聞舗に対する「優越的地位の乱用」と強要

では、これだけの負担を強いられているのに新聞舗はこの不正な制度を公にしてでも廃止させようとしないのでしょうか。考えられるのは二点です。

まず、第一に新聞社から販売店契約を解除されるからです。佐賀新聞の訴訟は二段階になっており、最初は押し紙相当分の損害賠償、そしてその後、佐賀新聞が契約期間満了に伴う販売店契約の解除を行ったことに対する地位保全の訴訟で、実際に発生している事案です。

この行為は、独占禁止法によって禁止されている「優越的地位の濫用」に該当するのですが、新聞舗としては、あまり本社(新聞社)とは揉めたくないというのが本音なのでしょう。

押し紙による折込料金の上乗せでは新聞社と新聞舗は広告料詐欺の共犯

次に考えられるのが、新聞社からの還付金である程度補填されているという事実とチラシ広告収入の増加が見込めるからです。チラシの折込広告料金は、A4の場合でいえば表向きはは3.3~4.0円程度ですが、実際は平均して3円程度です。

仮に販売部数を上記と同じ条件とし、1日平均20枚の折込を行ったとした場合は、4,200(部)×20(枚)×30(日)×3(円)=7,560,000円の収入になります。実数3,000部のときの収入5,400,000円と比較すると2,160,000円の増収となります。チラシの折込広告の収入は、販売店の収入になりますので非常に大きいです。

なお、同じチラシが1日に2枚も3枚も折込んであるのは押し紙相当分の余ったチラシです。さらに、押し紙が多すぎて当日の新聞に紛れて日付の古い新聞が配達されたというトラブルも発生することがあるようです。

押し紙は新聞社と広告代理店にとっても濡れ手に粟

新聞社にとっても、新聞紙上での広告料金は発行部数によって大きく違ってきますので、押し紙をして見かけの発行部数を増やせば高い広告収入が得られるという利点が有ります。しかも、昨今の新聞の購読者数の減少にも関わらず公表発行部数はほとんど減らない、という驚くべき事実が有ります。もちろん、新聞の広告枠を一括で買い取る広告代理店も周知の事実で、広告料金が高くなれば広告代理店の実入りも多くなりますので、「知らぬ存ぜぬ」で通すことになります。

第三者機関による発行部数調査は抜け穴だらけ

なお、新聞等の発行部数は第三者機関である「一般社団法人 日本ABC協会」が公査という形で立入検査を行っていますが、事前通知による立入検査の為、立入の予告があると新聞社の指示の元帳簿や領収書の入れ替えが行われるとの内部情報も有ります。これでは、実態を把握するのは無理です。結局は、第三者機関と言いながら内輪の調査なのです。

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大手五紙の全国シェアの実態とトラブルの原因

ところで、佐賀新聞を除けば、訴訟問題にまで発展しているのは大手全国紙です。何故全国紙の押し紙問題が多いのでしょうか?全国紙といえども大手5紙がシェアトップの都道府県は全国に10ヶ所しか有りません。そして、10ヶ所のうち読売新聞が9ヶ所、朝日新聞が1ヶ所で、他3紙はトップシェアの都道府県は一つも有りません。

さらに、トップシェア10ヶ所のうち30%を超えているのは僅かに4ヵ所のみで、それも関東のみです。押し紙の割合は各社まちまちですので実際のシェアはもっと低いのかもしれません。大手5紙といえども、実態は関東を除けばシェアは1桁台です。このようにシェアが低いと折込チラシを封入する価値が有りませんので、チラシの折込は、もっぱら地方紙によることになります。

その結果、全国紙の新聞舗は、チラシ折込の収入がほとんど無く、運営費を新聞社からの還付金に依存することになるのですが、配達員、勧誘員、集金員を抱え厳しい状態が続くためにトラブルが絶えないのです。

一連の押し紙問題は、新聞社の新聞舗に対する行為は押し売り、すなわち強要罪に匹敵する行為であり、また、実際の発行部数を上乗せして、広告料金や折込料金を過剰に上乗せして支払わせる行為は詐欺にも匹敵する行為です。4月15日の国会でも取り上げられましたが、世耕経産大臣の答弁は、「経済産業省としては、経済産業省所管の法人として、日本新聞販売協会がありますから、本当にいまご指摘のような問題が広範に存在して、販売業界として深刻な問題なら、この団体からわが省に申告があると思いますから、それを受けて必要であれば対応したいと思います。」、と、消極的で黙認する姿勢には呆れてしまいます。

これは、日本新聞販売協会が、以前は押し紙問題に積極に取り組み新聞社と戦っていたのに、いつの間にか新聞社に懐柔され、しかも自民党に政治献金までしていることと無関係では有りません。また、一旦刀をおさめることで、メディアコントロールの機会を先延ばししているとも考えられます。