がん予防にアメリカ国立がん研究所が推奨するデザイナーフーズ
目次
デザイナーフーズはがん予防に特化した食品
がん予防に効果のあるファイトケミカルを含む食品
自然の植物に含まれる植物栄養素、いわゆるファイトケミカルの働きが注目されていますが、この植物の中でがん抑制作用が疫学的なデータを基に効果が認められた食品がデザイナーフーズです。
デザイナーフーズは、1990年にアメリカの国立がん研究所で「食物の癌抑制効果」を研究するための「デザイナーフーズ・プログラム」という5年計画のプロジェクトの結果特定された約40種類の食品のことです。
デザイナーフーズ・プログラムの背景
背景には、1971年に当時のニクソン大統領が医療費全体にに占めるがん治療費が1割に上ることから、がんの撲滅を掲げました。1970年代後半には、「食と健康」に関する徹底した検証を行い、まず「糖尿病は栄養のアンバランスによる代謝病」等と様々な食品と健康との因果関係が指摘されました。また、アメリカの中でも、治療を中心とした医療に疑問を持ち、予防に関心が集まるようになりました。
また、 ハーバード大学で、1950年から82年までの32年間のがん死亡率を分析したところ、まったく減少していないことが判明し、がん対策には治療偏重からがん予防に重心を移す必要性を訴えたことが転機になっています。
「デザイナーフーズ・プログラム」は、食品成分を用いて臨床試験したものでは無く、疫学調査による膨大なデータに基づいていますので、確率論的因果関係を示したものです。とはいえ、アメリカの国立がん研究所が相当な期間を掛けて導き出した結論ですから信頼性は高いものです。
デザイナーフーズに分類された植物群
「デザイナーフーズプログラム」では、約40種類の食品が、効果の高い順番に1郡を頂点として3郡までピラミッド状に示されていますので、「デザイナーフーズピラミッド」と呼ばれています。しかし、この効果の順番は、あくまで1990年以前の疫学調査のデータに基づいていますので、それ以降の食物のそれぞれの有効成分やがん予防効果についての研究が進めば、郡間の移動や新しい食品の追加等の変更ありえます。
特に、最近ポリフェノール類の抗酸化作用が注目されるようになり、活性酸素の遺伝子破壊を防いでがん発生の抑制作用が明らかになってきています。
一郡に属する食品は
デザイナーフーズピラミッドの頂点に位置する
ニンニク、キャベツ、甘草(カンゾウ)、大豆、生姜、セロリ、セリ科の植物(人参、セロリ、パースニップ)
二群に属する食品は
玉葱、お茶、玄米、ウコン、全粒小麦、亜麻、柑橘類果実(オレンジ、レモン、グレープフルーツ )、ナス科の野菜(トマト、ナス、ピーマン )、アブラナ科の野菜(ブロッコリー、カリフラワー、芽キャベツ )
三群に属する食品は
マスクメロン、バジル、タラゴン、カラスムギ、ハッカ、オレガノ、キュウリ、タイム、アサツキ、ローズマリー、セージ、ジャガイモ、大麦、ベリーなどでハーブ類の比率が高くなっています。
但し、1郡に属する食品のがん抑制効果が最も強いかというと、必ずしもそうだと断定は出来ないようです。先述の通り、疫学調査を基にしていますので、データが多ければ信頼性が高いということになり、上位郡にピックアップされる可能性が高くなるようです。
デザイナーフーズの効果
また、「デザイナーフーズ」が発表されてから20年が経過し、その後の研究で大きく効果が認められる食品が新しく発見されたとしても追加はされていません。
アメリカでは、「デザイナーフーズ・プロジェクト」の結果を受けて、野菜や果物を1日に5皿分以上摂ることを目標にした5 A DAY運動を展開したこともあり、野菜などの植物性食品の摂取が増加しています。その結果、大腸がんをはじめとしたがんの減少に繋がっています。
最近の研究報告では、野菜の摂食が大腸がんの発生を抑制しているとの報告がされている他、大豆に、閉経した女性の大腸がんリスクを下げる働きがあるという報告も有ります。
さらに、ビタミンA、C、E、葉酸、カルシウムに大腸がんのリスクを下げる効果が有る他、マルチビタミンの長期服用は大腸がんの発症リスクを50%低減し、ビタミンEを一日200IU摂取する ことで、発症リスクが57%も低減するといった研究報告も発表されています。
東洋医学との共通点
「デザイナーフーズ」によるがん抑制効果を期待する未病・予防医学的な考え方は、中国の三皇五帝の一人で神農と呼ばれた黄帝が伝えたとする東洋医学の漢方医学に通じるところが有ります。人間にとって毒となる植物が数多くあることを考えれば、逆に人間にとって良いものがあるのは自然な考え方です。
漢方薬の薬効から成分を特定して、西洋医学で合成薬として処方されている例は数多く存在し、現在でも新しい薬草を求めて世界中の未開の地に製薬会社が調査員を派遣し、原住民が使っている薬草を調査している事実があります。