目次

インフルエンザとは

インフルエンザ患者の画像

インフルエンザは、インフルエンザウィルスに感染することによって発症する感染症です。インフルエンザウィルスにはA型、B型及びC型の三種類が有りますが、インフルエンザは、一般にはA型及びB型をさします。C型は症状も比較的軽く、一般に5歳児以下の小児が感染し鼻汁過多を特徴とする鼻かぜの様な症状で一度罹患すると一生免疫が持続するといわれています。小児期にほとんど罹患するので大人になってからC型インフルエンザに感染し発症するのは稀です。その為、インフルエンザワクチンもC型は対象としていません。

インフルエンザウィルスの正体

インフルエンザウィルスは、80~120nm(1nm=0.000001mm)程度の極微細なウィルスです。ウィルインフルエンザウィルスの画像スは、他の生物の細胞を介してのみ複製することが可能な構造体で、タンパク質の殻とその内部に入っている核酸から構成されています。生命の最小単位である細胞をもたないため、非生物もしくは非細胞性生物と云われています。分かり易く説明するために生物と無機物の中間的物質と表現する人もいます。そのため、良く勘違いされる細菌とは全く異質なものです。細菌は一定の環境・条件のもとで増繁殖を行いますが、ウィルスは、宿主を介すること無く増殖することは出来ませんから、空気中や水中で自然に繁殖することはありません。インフルエンザウィルスは、数秒から数時間、人の上皮細胞に付着した場合は5分程度で死滅(正確には破壊)するといわれていますが、条件によっては1~2日程度生存できるとの実験結果も報告されています。
なお、インフルエンザウィルスは熱に弱く、石鹸やアルコールで容易に殻を破壊することで死滅させることが出来ます。また、酸に弱くph2以下で不活化するので、胃に到達すれば胃酸で不活化されます。また、人類を含めてあらゆる生物から分泌される酵素の一種RNase (RNA分解酵素)に非常に弱いことから、先述の通り人の上皮細胞に付着した場合は5分程度で死滅するため、化学的には衣類に唾液・くしゃみなどが付着してもほとんど感染は起こらないと考えられています。

インフルエンザは、潜伏期間が他の病気に比べて短く1~2日程度ですが、これはインフルエンザウィルスが繁殖力が非常に強く、15~16時間で10,000倍まで増殖することに起因しています。また、増殖力が強いということは、僅かでもウィルスが付着して体内に入り込めば感染するということであり、感染力も強いということになります。

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インフルエンザの症状

初期症状

インフルエンザの初期症状は、強い悪寒の他、関節の節々の痛みがあるのが特徴です。また、倦怠感や頭痛や頭が重いといった症状が表れたのち、軽い場合を除くと数時間以内に38度以上の高熱が出て本症状が表れます。

本症状

その後次の様な本症状が出ます。
・3~4日間の38~40度程度の高熱
・1日数回下着の着替えが必要な程度の発汗
・強い寒気
・咳及び鼻水
・喉の痛み
・関節や筋肉の痛み
・頭痛及び頭のフラフラ感
・食欲不振
・高熱による睡眠障害
世話をしてくれる家族や同居人が居なければ、食事をすることも水分補給をすることも難しく、ひょっとしたらこのまま死んでしまうのかと感じる程の重篤な症状や不安に陥ることもあります。動ける間に病院に行って治療・投薬と食料とスポーツドリンクの準備は絶対に欠かせません。

インフルエンザの合併症

インフルエンザは、激しい症状のため苦痛を伴いますが、インフルエンザが本当の恐ろしさは危険な合併症が有るからです。インフルエンザを直接の原因とする死亡よりも合併症を併発することによる死亡の方がはるかに多いのです。 インフルエンザの合併症は、インフルエンザウィルスを直接原因とする一次性のものと、インフルエンザウィルス以外の細菌による二次性のものに分けられ、それぞれの主な合併症と症状は次の通りです。

肺炎

肺炎は、インフルエンザの合併症の内で死亡原因としては最も高く一番です。肺炎は、インフルエンザウィルスによるものと細菌性肺炎に分けられますが、細菌性肺炎の方が発生頻度は高くなっています。

インフルエンザウィルス肺炎

インフルエンザ発症後の早い時期に併発し次の症状が表れます。
・高熱が続く
・呼吸が苦しい
・チアノーゼなどが起こる
・咳及び血痰がでる

細菌性肺炎

インフルエンザの症状が治まった後に、再び次の様な症状が出た場合に二次性の細菌性肺炎が疑われます。
・再び発熱後高熱が続く
・咳及び膿のような痰がでる
・寒気がする
・呼吸が苦しい
・多呼吸及び脈が早い

脳症

一般的に乳幼児に多い合併症で、6歳以下に高い頻度で発症し、死亡率は10%から場合によっては30%程度と云われています。また、症状が治まった後も4人に1人の割合で後遺症が残るといわれている非常に危険な合併症です。
症状は、インフルエンザ発症後の早い段階で
・けいれん
・異常行動
・意識障害
・嘔吐
という形で症状が表れ、その後多臓器不全や血液障害により突然死することがあります。

気管支炎

風邪の症状に似ていますが、乾いた咳が長く続くようだと気管支炎が疑われます。高齢者の方に発症頻度が高くなります。

中耳炎

耳の中(中耳)がチクチクと痛くなります。大人よりも子供に多い合併症です。

その他

その他、心筋炎、心膜炎、ライ症候群が合併症として発症することが有ります。

インフルエンザの感染経路

インフルエンザウイルスは、人間や豚の場合咽喉や目の粘膜に、鳥類では大腸の上皮細胞に感染して増殖します。なお、実験室及びインフルエンザワクチンの製造過程では、有精鶏卵の漿尿液(しょうようえき)の部分にウイルスを接種して大量に培養することができます。
インフルエンザウィルスは、経口感染、経鼻感染及び目の粘膜への接触により体内に取り込まれます。取り込まれるまでの時間は、細胞に接触してから10~15分程度と云われています。単に、粘膜以外の部分の細胞に付着しても感染することは有りません。経口感染、経鼻感染及び目の粘膜への接触による感染の方法としては、飛沫感染と接触感染で、よく言われる空気感染は無いと考えられます。アメリカで行った実験で、対流のある部屋にインフルエンザ発症者と非感染者を仕切りだけで分離して生活させたところ、感染は全く起こらなかったそうですが、発症者が触ったコップを非感染者に触らせたところ約3割に感染したそうです。人間は、無意識のうちに数分間に一回の割合で口の周りに手を持って行くそうですので、手にインフルエンザウィルスが付着していれば口から咽喉の粘膜に容易に感染します。

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インフルエンザの予防対策

予防接種

インフルエンザの予防接種は、不活化ワクチンを接種します。生ワクチンの場合は、毒性を弱めたウィルスを体内インフルエンザ予防接種の画像で増殖させて、それに対して体が抗体を作り免疫力を高めていきますが、不活化ワクチンは、細菌やウィルスを殺して毒性をなくした後、抗体をつくるのに必要な成分を取り出して免疫力をつけるものです。その為、ワクチンを接種することでインフルエンザに感染することは有りません。
現在の皮下接種型のインフルエンザワクチンは、感染予防よりも重症化を防ぐことを目的とした予防法です。一般にワクチンの接種により、1/3が感染せず、1/3が軽症で、残り1/3には効果は認められないといわれていますが、乳幼児の場合は発症を予防できる程度の免疫を獲得できる割合は20-30%と云われています。

ビタミンDの摂取

東京慈恵会医科大の浦島充佳准教授のチームは、魚やキノコに多く含まれるビタミンDが、季節性インフルエンザ予防に効果があることを突き止め米臨床栄養学会誌に掲載しました。同大の浦島充佳准教授のチームは、平成20年12月~21年3月の4ヶ月のインフルエンザ流行期に、12病院の協力を得て6~15歳の子供334人を対象に、半数にビタミンD(30マイクログラム)入りカプセルを、残りにビタミンDが入っていないカプセルを毎日与えた実験を行った結果、ビタミンD入りグループのインフル発症率は10.8%で、ビタミンDなしのグループは18.6%で42%も発症率が低下したといいます。ビタミンDは、サバなどの魚類やシイタケなどのキノコ類に含まれる他、紫外線を浴びることで皮下脂肪のコレステロールの一種がビタミンDに変わり増える、体内で生成される唯一のビタミンです。

食物からの摂取

ビタミンDは、ビタミンD2とビタミンD3に分類されますが、インフルエンザ予防にはビタミンD3の方がより効果的と云われています。ビタミンD2の前駆物質であるプロビタミンD2(エルゴステロール)はキクラゲや干し椎茸に、ビタミンD3は魚類の肝臓に多く含まれており、特に多いのが、あんこうのきも、しらす干し(半乾燥)、身欠きニシン、すじこ、いくら、鮭、にしん、さんま等です。

日光浴

日光浴は、一日15~30分程度で十分と云われています。最近、大人に限らず子供も日向ぼっこをするのはほとんど見かけません。また、以前に比べて屋外で遊ぶ子供も少なくなっています。日光浴は費用が掛からず簡単にできます。医者は、合間を見て日光浴を良くすると聞いています。インフルエンザ患者に毎日接している医者にインフルエンザ患者が少ないのはこういった心掛けが影響しているのかもしれません。、

十分な睡眠と休養

睡眠不足になると、体の免疫力が低下し、インフルエンザに感染しやすい体質に変わってしまいます。栄養と睡眠を十分に摂り体力をつけることがインフルエンザ予防の基本です。

手洗い・消毒

手洗いの画像インフルエンザウィルスは、石鹸やアルコールで簡単に死滅させることが出来ます。手洗いは水洗いで長くするよりも、石鹸をつけて洗った方が早くて効果的です。そして、手洗いの後にアルコールで消毒すると一層効果が有ります。また、家族にインフルエンザの罹患者がでたら、こまめに取っ手のノブや触ったところをアルコールで消毒すれば感染防止になります。

水の摂取

ペットボトルに入った水の画像

良くいわれるうがいは、10~15分に一回程度の頻度で行わないとウィルスが粘膜から体の中に入ってしまいますので、あまり効果は期待できません。そこで、ペットボトルの水やジュース類を少しづつ摂取し喉の粘膜に付着したウィルスを胃に流すようにします。うがいは洗面所が無いと出来ませんが、水分の摂取は電車の中でも、職場の仕事中でも簡単に摂ることが出来ます。

マスクの着用

欧米ではインフルエンザに対するマスクの効果には否定的で、日本人のマスクの着用の様子に違和感マスクを着用している女性を覚える様子が報道されたことも有りますが、実際はどうかといいますと大いに効果が期待できます。
先述の通り、インフルエンザウィルスの感染経路は、経口感染、経鼻感染及び目の粘膜からの感染です。そして、人は頻繁に手を口や鼻の周りに触れます。この過程で手に付着しているウィルスが口の中等に入り感染します。一方、感染者が咳、クシャミをする際にマスクをしていない場合は、両手で口の前を塞ぐようにしてクシャミをしている光景を良く目にします。そして、その手で吊り皮や手すりを触るわけですからウィルスだらけです。しかし、マスクをしていれば咳やクシャミをしても相当量拡散を抑えることが出来ます。感染させる方からも予防する方からも効果が十分に効果があります。
さらに、マスクを着用することで口の中の湿度を保ち咽喉の粘膜を保護します。そのため、粘膜の活動が活発でインフルエンザウィルスの侵入を防止してくれます。

治療薬の予防薬としての利用

家族にインフルエンザの感染者が出たら、タミフルやリレンザを服用することで感染を予防することが出来ます。また、服用自体も条件付きで認められていますが、日本の健康保険では予防に関しては保険が適用されませんので、全て自費になります。