タックスヘイブンへの大企業・富裕層の資産移動は脱税か?節税か?
タックスヘイブンであるオフシェアへの資産の移動は、合法的な節税になるのでしょうか?あるいは、脱税的な要素が含まれているのでしょうか?
パナマ文書なる資料が流出したことで俄かに流行語となった「タックスヘイブン」ですが、今回流出し明らかになったのはパナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」の取り扱い分だけで「モサックルート」と呼ばれているものです。他の法律事務所が扱ったもの及び他のタックスヘイブンであるオフショア地域・国々は含まれていません。また、「モサック・フォンセカ」はパナマだけでなく香港にも事務所を有しており中国の富裕層を得意先としていることから、今回特に中国関係者が多く含まれています。
国際決済銀行の統計によりますと、日本の法人のオフショア市場での金融資産残高は、ケイマン諸島だけで55兆円で米国に次いで2番目の金額で、世界全体では80兆円にも上り、世界でのシェアは25%です。バージン諸島は、イギリスに含まれるため国際決済銀行のオフショア市場の統計から除外されており、バージン諸島及び個人富裕層の残高を加算すると100兆円を超えるものと予測され、日本の国家予算を上回る可能性が有ります。
東証に株式上場している時価総額の上位50社のうち9割に当たる45社がタックスヘイブンに子会社を持っています。企業別にみると、みずほFGが45社でダントツ、ソニー34社、三井住友FG27社、三井物産27社、三菱商事24社となっていて、金融グループや商社が多くなっています。
では、大企業及び個人富裕層がタックスヘイブンのオフショア地域に法人を設立したり、資産を移動させる目的は何でしょうか?
まず、オフショア地域は、地域及び国によって多少の違いが有るものの優れた金融商品が豊富で、法人税、所得税、固定資産税、贈与税、相続税その他ほとんどの税金が一律もしくは海外で得た所得等の条件付きで無税または低税率であることから、利益の循環及び設備投資が早くできるため企業の成長が早い。
法人設立が容易で手数料が安く、情報の機密性や匿名性は高く保たれる。
日系法人で無く現地法人として取引出来る。
等が挙げられます。
それでは、全て合法的で脱税等の違法行為は無いのでしょうか?
まず、個人事業主や同族の小規模な法人が脱税して浮かした資金、大中企業の裏金及び反社会的団体が隠し資産としてタックスヘイブンに口座を開き資産を移動させるマネーロンダリングとして利用する場合は、違法な行為となります。国内の金融資産はマイナンバー制度の運用拡大でいずれ個人別に全て一元管理される時代が来ますので、タンス預金以外は全て明らかになります。タックスヘイブンのオフショア地域でも口座を開設した場合は、居住国に通知する動きが有りますが未だ確定的では有りません。
次に、国内とタックスヘイブンで二重に給与を支払ってタックスヘイブンでの給与を脱税する等の手口です。海外での勤務実態が無いのに、役員として名を連ねて役員報酬を得たり、従業員とし給与を貰う方法です。この場合、国内での報酬を海外で支払うということで有れば脱税に当たります。
また、イギリスで問題になりましたスターバックスの手法はどうでしょうか?スターバックスの節税の方法は、法人税の安いスイスに子会社を設立しコーヒー豆をそのスイスの子会社から高値で買い入れ、イギリスでの利益を減らした他、オランダにあるヨーロッパ本社が知的財産権を有した形にして、そこに多額のロイヤリティを支払うことによって同様にイギリスでの利益を減らしたというものです。
通常の商取引の限度を超えた支払いの場合は、意図的に経費を水増しした脱税行為と看做されるかもしれません。
しかし、個人の場合は節税と称しても本来脱税を意識した資産移動と考えて間違いではないでしょう。
ところで、「パナマ文書」で今回明らかになった日本に住所のある法人は400程度といわれていますが、海外法人の子会社の子会社(日本法人の孫会社)の形をとれば日本関連法人としては認識されないかもしれません。